インドネシア産コーヒーの特徴とは?独自製法が織りなすコクと人気銘柄を解説
ジャワ島やスマトラ島を擁し、世界有数のコーヒー生産国として知られるインドネシアですが、そこから産出されるコーヒー豆は他国にはない強烈な個性を持っています。
深いコクと力強い苦味、そして「スマトラ式」と呼ばれる独創的な精製方法が、世界中のコーヒー愛好家を惹きつけてやみません。
- インドネシア産ならではのどっしりとした強烈な苦味と深いコクが堪能できる
- 降水量の多さに適応したスマトラ式精製が深いコクと特有の緑色の豆を作る
- マンデリンの強烈な苦味やトラジャの上品な甘みなど島ごとに異なる個性を味わえる
- 酸味を抑える深煎り豆を選び85度で抽出すると家庭でも極上のコクを楽しめる
本記事では、編集部で実際に豆を比較検証しながら、インドネシア産コーヒーが持つ良さとその特徴を引き出す最適な淹れ方を順番に解説します。
インドネシア産コーヒーの深いコクと苦味を生み出す3つの特徴
インドネシアで栽培されるコーヒーには、中南米やアフリカの豆とは明確に異なる独特のプロフィールが存在します。
ここでは、そんな根幹を成す味わいと生産背景の大きな特徴をまとめました。
インドネシア豆ならではの代表的な3つのポイントを、ここから順番に解説していきます。
- 酸味が控えめでどっしりとした重厚な苦味がある
- 大地の香り(アーシー)と呼ばれる野性的な風味
- 生産されるコーヒーの大半をロブスタ種が占める
酸味が控えめでどっしりとした重厚な苦味がある
コーヒーといえばフルーティな酸味を連想する方もいますが、インドネシア産の銘柄はその対極に位置する存在です。
飲んだ瞬間に舌全体へ広がる、どっしりとした重厚な苦味が最大の特徴となります。
ただし酸味が極めて控えめなため、酸っぱいコーヒーが苦手な方でも安心して楽しめるのが嬉しいところです。
まるでビターチョコレートを口に含んだような濃厚なボディ感があるので、食後の口直しやリフレッシュしたい場面にもぜひ試してみてください。
ミルクをたっぷり注いでもコーヒーの輪郭が一切ぼやけないため、しっかりとしたカフェオレを作りたい時にこそぴったりの存在と言えるでしょう。
大地の香り(アーシー)と呼ばれる野性的な風味
インドネシア産の豆を評価する上で、必ずと言っていいほど登場するのが「アーシー(Earthy)」という表現です。
グラスを傾けると、雨上がりの大地や森の木々を思わせる、少し野性的でスパイシーな香りが鼻腔を抜けていきます。
これは他国のテロワール(生育環境)ではなかなか再現できない、エキゾチックな風味として高く評価されるポイントです。
特に深煎りにした際にこの香りがより一層引き立ち、複雑で奥行きのある余韻を長く楽しめるでしょう。
「一度この香りにハマると、他の産地では物足りなくなる」と語る愛好家も少なくありません。
生産されるコーヒーの大半をロブスタ種が占める
市場に流通しているコーヒー品種の割合も、インドネシアならではの特殊な事情を抱えています。
実は、現地で生産されるコーヒーの多くはアラビカ種ではなく、病虫害に強いロブスタ種(カネフォラ種)が大部分を占めているのです。
- ロブスタ種:全体の約80〜90%を占める
- アラビカ種:わずか約10〜20%のみ
インドネシアのコーヒー総生産量のうち、約90%がロブスタ種であると言われています。
過去にサビ病と呼ばれる植物の病気が大流行し、壊滅的な被害を受けた歴史がその背景にあります。
そのため病害に強いロブスタ種への大規模な植え替えが進められたことで、現在の生産比率が定着しました。
私たちが普段プレミアムコーヒーとして楽しんでいる「マンデリン」などは、わずか1割程度しか生産されない希少なアラビカ種です。
インドネシア産コーヒーの味わいを深める精製方法「スマトラ式」の特徴
個性的な風味をもたらす要因は、気候や品種だけにとどまりません。
ここではインドネシア地方特有の環境下でつくられた、独自のコーヒー豆処理プロセスを見ていきます。
世界でも類を見ない特殊な精製方法の詳細を、さっそく順番に解説しましょう。
- 降水量の多い環境で生まれた独自の精製プロセス
- 特殊な乾燥手法がつくり出す独特の深いコクと生豆の青緑色
降水量の多い環境で生まれた独自の精製プロセス
通常のコーヒー豆は果肉を剥いた後、硬い殻(パーチメント)が付いた状態で数日間にわたり乾燥させるのが一般的です。
しかし、インドネシアのスマトラ島などは一年を通して降水量がとっても多く、屋外でゆっくりと乾燥させる時間を確保するのが困難な環境にあるのです。
そこで考案されたのが、豆がまだ生乾きの状態にも関わらず、殻を剥いで直接豆を乾燥させる「ギリン・バサ(スマトラ式)」という手法です。
現地語でギリンバサ(Giling Basah)と呼ばれるこの方法は、英語圏では「ウェットハリング(Wet Hulling)」の名称でも広く知られています。
天候の制約を逆手にとったこの効率的な精製方法こそが、世界的にも珍しいインドネシア特有の手順になります。
特殊な乾燥手法がつくり出す独特の深いコクと生豆の青緑色
このスマトラ式は、加工の過程で豆が直接外気に触れる時間が長くなります。
その結果として、生豆が一般的な淡い褐色ではなく、深い青緑色(エメラルドグリーン)へと変色するのが外観上の大きな特徴です。
単に色が変わるだけでなく、水分を含んだ状態での乾燥が複雑な化学反応を引き起こし、先述したアーシーな風味や重厚なコクをつくり出すとも言われています。
自然の制約から生まれた手法が、かえって世界中のロースターを唸らせる唯一無二の味わいを作り上げたのはとっても興味深い事実です。
インドネシアを代表するおすすめコーヒー銘柄の特徴
インドネシアには、島ごとに異なる気候風土を生かした個性豊かなコーヒー銘柄が多数存在します。
編集部でも頻繁に取り寄せる、とっておきの種類を厳選してご紹介します。
それぞれの島が誇るおすすめの絶品銘柄を、ここから順番に見ていきましょう。
- スマトラ島が誇る重厚なボディ感「マンデリン」
- スラウェシ島で愛された幻のコーヒー「トラジャ」
- 神々の島とも呼ばれるバリ島の「バリ・シンザン」
- ジャコウネコがつくり出す世界有数の希少品「コピ・ルアク」
スマトラ島が誇る重厚なボディ感「マンデリン」
インドネシア産アラビカ種の代名詞とも言えるのが、スマトラ島北部で栽培される「マンデリン」です。
まるでシロップのような滑らかな舌触りと、力強い苦味、そしてハーブのような複雑な香りが同居しています。
例えば国内の喫茶店でも深煎りコーヒーの定番として愛されており、濃厚なケーキや重めのスイーツと合わせるなら間違いのない選択肢でしょう。
酸味をほとんど感じさせないため、苦味の強いコーヒーが好きな方にとっては極上の銘柄として長年支持され続けています。
スラウェシ島で愛された幻のコーヒー「トラジャ」
スラウェシ島で栽培される「トラジャ」は、かつてヨーロッパの王侯貴族に愛された歴史を持つ気品ある銘柄です。
第二次世界大戦の影響で一度は農園が荒廃し「幻のコーヒー」と呼ばれるようになりましたが、キーコーヒーによる支援もあり現在は見事に復活を遂げています。
マンデリンのようなどっしりとしたコクを持ちつつも、どこかクリーミーで洗練された甘みと、微かな酸味が上品に顔を出すのがトラジャの個性です。
重厚さの中に透き通るような上品さを兼ね備えており、ぜひブラックでゆっくりとその変化を楽しんでみてください。
神々の島とも呼ばれるバリ島の「バリ・シンザン」
観光地としても有名なバリ島の活火山、バツール山周辺で栽培されているのが「バリ・シンザン」。
精製工程を丁寧に管理したクリーンな味わいが特徴で、近年スペシャリティコーヒー市場でも高く評価されています。
インドネシア産の力強さを残しながらも、マンデリンと比べると口当たりがずっとマイルドで、チョコレートのような甘い余韻が特徴的です。
「インドネシアの豆に興味はあるけれど、あまりに苦すぎるのは少し不安」と感じる方にこそ、最初に試していただきたい飲みやすい銘柄となります。
ジャコウネコがつくり出す世界有数の希少品「コピ・ルアク」
世界でも有数の高価なコーヒーのひとつとして知られるのが、ジャコウネコという動物を介して作られる「コピ・ルアク」(コピルアク)です。
完熟したコーヒーチェリーを食べたジャコウネコのフンから、未消化のまま排出されたパーチメント(種子)を洗浄して焙煎するという特殊な工程を経ています。
なぜそこまで高価で取引されるのか?
ジャコウネコの腸内で自然発酵を経ることで、苦味成分が変化し、独特の麝香(じゃこう)を思わせる甘く複雑な香りが豆に付与されると考えられています。
また、野生の個体から採取する量には限界があり、際立った供給不足が価格を押し上げています。
口に含んだ瞬間のキャラメルのような濃厚な甘みと、雑味の一切ないクリアな質感はまさに別格の体験をもたらします。
現地で親しまれているインドネシア産コーヒーの特徴的な飲み方
コーヒーの楽しみ方は、その国の風土や食事情と密接に結びついているものです。
インドネシア現地で日常的に親しまれている、少し変わった伝統的な抽出スタイルを取り入れてみます。
旅行気分を味わえる現地のユニークな飲み方を、次から詳しく見ていきましょう。
- フィルターを使わず粉にお湯を直接注ぐ伝統スタイル
- コーヒー粉が沈むのを待って上澄みを飲む濃厚な味わい
フィルターを使わず粉にお湯を直接注ぐ伝統スタイル
日本や欧米のドリップ抽出とは異なり、現地では「コピ・トゥブルック(Kopi Tubruk)」と呼ばれる淹れ方が主流です。
グラスやカップに深煎りにして極細挽きにされたコーヒー粉と大量の砂糖を入れ、そこへ直接熱湯を勢いよく注ぐという独自のスタイルを持ちます。
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1
耐熱グラスに極細挽きのコーヒー粉をたっぷり入れる
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2
お好みで砂糖(現地ではスプーン2杯以上入れることも)を追加する
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3
沸騰した熱湯を一気に注ぎ入れ、スプーンで勢いよくかき混ぜる
フィルターで濾過しないため、コーヒー豆が持つオイル分や香りをダイレクトに抽出できるのがこの方法の利点です。
トルココーヒーなどにも似た、気候風土に合った伝統様式のひとつとして覚えておいてください。
コーヒー粉が沈むのを待って上澄みを飲む濃厚な味わい
お湯を注いだ後、カップの中で粉が完全に底へ沈殿するのを数分間静かに待ちます。
粉が沈んだ後、表面に浮いた上澄みの部分だけをゆっくりとすするように味わうのが現地の流儀です。
実際に微粉ごと淹れてみると、ペーパーフィルターでは到底出せない「とろみ」のある強いコクが口いっぱいに広がり驚きました。
粉っぽさを少し感じるものの、コーヒー本来の野性的な香りと砂糖の強い甘みが絶妙に絡み合うからこそ、疲労感が吹き飛ぶような一杯を堪能できるのです。
現地の屋台や食堂で親しまれる、活気あるインドネシアの空気を感じられるおすすめの飲み方です。
インドネシア産コーヒーの特徴を最大限に引き出すおすすめの淹れ方
マンデリンをはじめとするインドネシア産コーヒーを手に入れた際、家庭でペーパードリップで淹れるための最適解を改めて探りました。
編集部で様々な条件を変えて検証した結果、もっとも美味しく味が引き立つ仕上がりレシピが存在します。
コクと甘みを最大限に引き出す抽出のコツを、ここから順番に解説していきます。
- 焙煎度はコクを活かすフレンチロースト(深煎り)を選ぶ
- 雑味を防ぐため抽出温度は少し低めの85度付近に設定する
焙煎度はコクを活かすフレンチロースト(深煎り)を選ぶ
インドネシア産の豆を選ぶ上で、焙煎度は味わいを決定づけるとっても重要な要素となります。
- 使用豆: スマトラ産 マンデリン(G1)
- 使用量: 15g(中細挽き)
- 湯温・湯量: 85℃ / 240ml
- 抽出時間: 約2分30秒
結論から言うと、特有のアーシーな香りと重厚なボディ感を極限まで引き出すには、フレンチロースト(深煎り)を選ぶのが正解です。
浅煎りにすると、スマトラ式特有の土っぽい風味が少しネガティブに強調されてしまい、飲みにくさを感じる傾向が見られました。
しっかりと火を入れたフレンチローストにすることで、不要な酸味が飛び、奥深いカラメルのような甘みが顔を出します。
購入時は、豆の表面にコーヒーオイルがじんわりと滲み出した見た目であるかどうかを目安にしてみてください。
雑味を防ぐため抽出温度は少し低めの85度付近に設定する
深煎りのコーヒー豆を抽出する際、熱湯(95度付近)を直接注ぐことは避けた方が無難でしょう。
お湯の温度が高すぎると、焦げたような強い苦味やエグみといった雑味が過剰に抽出されてしまいます。
少し低めの「85度付近」までお湯を冷ましてからドリップすることで、過度な苦味が抑えられ、インドネシア産特有の甘みとまろやかなコクだけを綺麗に抜き出すことができました。
コツとしては、沸騰したお湯を別のドリップポットに一度移し替え、1分ほど待てばちょうど良い温度に落ち着きます。
少しの工夫で、専門店のようなどっしりとしているのにクリアな一杯を再現してみてください。
インドネシア産コーヒーの特徴に関するよくある質問
これまでの内容を踏まえ、インドネシア産コーヒーを選ぶ際によく頂戴する疑問にお答えします。
普段からお問い合わせの多い内容を厳選してピックアップしました。
日常のコーヒーライフを充実させるためのちょっとしたヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
カフェオレやミルクとの相性は良いですか?
間違いなく抜群の相性を誇ります。
マンデリンなどのインドネシア産コーヒーはとってもボディ感(コク)が強いため、多めの牛乳を注いでもコーヒーの味が水っぽく薄まりません。
深煎りの豆を濃いめにドリップし、温めたミルクと半々の割合で割るだけで、お店のような本格的なカフェオレが簡単に作れます。
苦味と合うおすすめのお菓子やスイーツは何ですか?
バターをたっぷり使った濃厚な焼き菓子や、ビターチョコレート系のスイーツと合わせるのがおすすめです。
コクが強いため、軽いスイーツよりもガトーショコラやチーズケーキといった重ためのスイーツの方が、コーヒーの強さに負けず絶妙なマリアージュを奏でます。
【まとめ】インドネシア産コーヒーの特徴を知って自宅で最高の一杯を
インドネシア生まれのコーヒーが持つ特徴から、美味しい淹れ方まで詳しく解説しました。
深い歴史と独自製法を知ることで、毎日のコーヒータイムがさらに豊かなものになるはずです。
- 酸味がとっても少なく、どっしりとした重みのある苦味が主役
- 「スマトラ式」と呼ばれる降水量の多い地域特有の精製方法が風味の鍵
- マンデリンやトラジャ等、島ごとに異なる個性豊かな銘柄が揃う
- フレンチローストの豆を85度の少し低めのお湯で淹れると甘みが際立つ
フルーティな軽いコーヒーが流行する昨今でも、インドネシア産「マンデリン」の深く重厚な味わいに魅了され続けるファンは後を絶ちません。
まだ飲んだことがない方は、ぜひ深煎りの豆を手に入れて、そのアーシーで野性的なコクの世界をご自宅で体験してみてください。
