エスプレッソを淹れたとき、カップの表面にふわっと浮かぶキャラメル色の泡——それが「クレマ」です。
クレマの正体は、コーヒー豆に含まれる炭酸ガスとオイルが高圧抽出で乳化して生まれるきめ細かい泡の層です。
この記事では、クレマができる仕組みから美味しいクレマの条件、自宅での楽しみ方まで、編集部が実際に3種類の豆で比較検証した結果も交えながらお伝えしていきます。
おうちエスプレッソでもカフェのようなクレマを目指したい方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
- クレマはイタリア語で「クリーム」を意味し、約9気圧の高圧で炭酸ガスとオイルが乳化して生まれる
- 焙煎3日〜2週間の豆を極細挽きにし、90〜96℃で20〜30秒抽出するとしっかりしたクレマが出る
- キャラメル色で厚さ2〜4mmの「タイガースキン」が理想的なクレマの目安
- 豆の鮮度・挽き目・タンピングの3要素を見直すだけでクレマは改善する
- 増圧弁付きマキネッタやハンドプレッソならマシンなしでもクレマに近い泡を楽しめる
- クレマの量が多い=美味しいとは限らず、浅煎りスペシャルティは薄めでも風味に優れる
クレマとは?コーヒーの表面に浮かぶきめ細かい泡の正体
エスプレッソを語るうえで欠かせない「クレマ」について、まず基本から確認していきます。
定義・語源・役割・鮮度との関係をそれぞれ解説します。
- クレマはエスプレッソ抽出時にできるキャラメル色の泡
- イタリア語で「クリーム」を意味するエスプレッソの象徴
- 香りを閉じ込め、口当たりをなめらかにする働きがある
- 豆の鮮度を示す指標としても使われる
クレマはエスプレッソ抽出時にできるキャラメル色の泡
エスプレッソをカップに注いだ直後、表面にふんわりと広がるキャラメル色の層がクレマです。
この泡はドリップコーヒーの表面にできる気泡とはまったく別物で、エスプレッソマシンの高圧抽出でしか生まれません。
クレマの厚さはおよそ2〜4mm程度で、きめ細かくクリーミーな質感が特徴です。
淹れてから30秒ほどは消えずに残り、指でなぞると薄い跡が付くくらいの密度があります。
初めてクレマがきれいに出たとき、思わずスマホで写真を撮りました。
キャラメル色の泡が広がった瞬間は、おうちエスプレッソのモチベーションが一気に上がります。
イタリア語で「クリーム」を意味するエスプレッソの象徴
クレマはイタリア語で「クリーム」を意味する言葉です。
イタリアのバール(カフェ)では、クレマが美しく浮かんでいるかどうかがバリスタの腕を測る指標のひとつとされています。
1940年代にアキッレ・ガッジアがレバー式エスプレッソマシンを普及させた頃から、この泡は「カフェ・クレマ(クリームコーヒー)」と呼ばれ親しまれてきました。
現代でもイタリアでは「クレマのないエスプレッソは失敗作」と言われるほど、見た目と味の両面で重視される存在です。
香りを閉じ込め、口当たりをなめらかにする働きがある
クレマには飾り以上の役割があります。
表面を覆うことでエスプレッソの芳醇なアロマが空気中に逃げるのを防ぎ、カップに顔を近づけたときに一気に香りが立ちのぼるのです。
さらに、泡は口の中で弾けて油分や糖分をなめらかに広げるため、液体だけで飲むよりもクリーミーな口当たりに変わります。
つまりクレマは「見た目」「香り」「口当たり」の3つを同時に高めてくれる、エスプレッソの名脇役です。
豆の鮮度を示す指標としても使われる
クレマの出方は、使っている豆の鮮度をそのまま映し出します。
焙煎したての豆は内部に炭酸ガスを豊富に含んでいるため、抽出するとしっかりしたクレマが立ちます。
逆に焙煎から時間が経った豆はガスが抜けてしまい、どんなに抽出を工夫してもクレマは薄くなります。
バリスタの間では「クレマが出ない=豆を替え時」という目安に使われることもよくあります。
コーヒーのクレマができる仕組みを科学的に解説
クレマの正体を知るには、エスプレッソの抽出で何が起きているかを順番に追ってみると理解しやすくなります。
ここでは3つのステップに分けて解説していきます。
- 焙煎で豆の内部に溜まった炭酸ガスが原材料になる
- 約9気圧の高圧抽出でガスと油分が液体に溶け込む
- 圧力の解放で気泡が一気に生まれクレマが形成される
焙煎で豆の内部に溜まった炭酸ガスが原材料になる
コーヒー豆は焙煎中にメイラード反応やカラメル化が進み、その副産物として大量の二酸化炭素(CO2)が発生します。
生まれたガスの一部は焙煎中に放出されますが、残りは豆の細胞構造の中に閉じ込められたまま残っています。
この「豆の中のガスの貯金」が、後にクレマを作り出す原材料になるのです。
焙煎直後はガスが多すぎて抽出が安定しないため、3日〜2週間ほどかけて適度にガスが抜けた状態がクレマにとってのベストタイミングです。
約9気圧の高圧抽出でガスと油分が液体に溶け込む
エスプレッソマシンの抽出圧は約9気圧です(ポンプの最大圧は15気圧でも、実際は9気圧前後に調整される設計)。
この高い圧力の下では、常圧なら溶けきれない量の炭酸ガスとコーヒーオイルが液体の中に押し込まれます。
つまり炭酸飲料の製造と同じ原理で、圧力が高いほど多くのガスが湯に溶け込む仕組みです。
家庭用マシンのスペックに「15気圧」と書かれていても、抽出時に粉にかかる圧力は9気圧前後が一般的です。
15気圧はあくまでポンプの最大出力であり、OPV(過圧弁)が作動し、抽出に最適な9気圧へと自動で調整されています。
圧力の解放で気泡が一気に生まれクレマが形成される
抽出されたコーヒーがポルタフィルターからカップに注がれた瞬間、圧力が一気に常圧まで下がります。
すると液体中に溶け込んでいた炭酸ガスが飽和状態を超え、無数の微細な気泡となって飛び出してくるのです。
このとき、コーヒーオイルやタンパク質が気泡の膜を包み込んで安定させるため、ビールの泡のようにすぐには消えません。
油分とタンパク質が「泡の骨格」を支えているからこそ、このバランスが崩れると、クレマはあっという間に消えてしまうでしょう。
ドリップコーヒーでもハンドドリップ時に「蒸らし」で泡が出ますが、これは炭酸ガスが大気圧で放出された結果です。
エスプレッソのクレマとは圧力の桁が違うため、泡の密度や持続時間はまったく別物です。
美味しいクレマを出すためのコーヒー豆と抽出の条件
美味しいクレマを楽しむには、豆の選び方と抽出の設定がどちらも重要になります。
ここでは8つの条件をひとつずつ見ていきます。
- 焙煎から3日から2週間ほどの新鮮な豆がベスト
- 深煎りでロブスタ種がブレンドされた豆は泡立ちやすい
- 極細挽きから細挽きに調整するのが基本
- 抽出直前に挽くと炭酸ガスが逃げず鮮度を保ちやすい
- タンピングは均一かつ垂直に約15〜20kgの力で押す
- 抽出温度は90〜96℃が適正範囲
- 抽出時間は20〜30秒で仕上げる
- 硬度150〜300ppm程度の水を使うと安定しやすい
焙煎から3日から2週間ほどの新鮮な豆がベスト
焙煎直後の豆はガスが多すぎて湯の通りが不安定になりやすく、逆に焙煎から3週間を超えた豆はガスが抜けきってクレマが出にくくなります。
焙煎から3日〜2週間ほど経過した豆が、ガスの放出と保持のバランスがちょうど良い「クレマの旬」です。
コーヒー専門店で購入するときは焙煎日を確認し、2週間以内に使い切る量だけ買うのがポイントになります。
深煎りでロブスタ種がブレンドされた豆は泡立ちやすい
深煎りの豆は焙煎時に内部のガスが増えやすいため、浅煎りと比べてクレマ量が多い傾向です。
さらに、ロブスタ種はアラビカ種に比べてクレマが安定しやすいと言われており、イタリアのエスプレッソブレンドにはロブスタ種が10〜30%ほどブレンドされていることが多いのです。
ただしロブスタ種は苦味が強いため、味のバランスも考えて選んでみてください。
極細挽きから細挽きに調整するのが基本
挽き目が粗いとお湯が粉の中を素早く通過してしまい、ガスとオイルの抽出が不十分になります。
エスプレッソ用にはパウダー状に近い極細挽き〜細挽きに調整するのが基本です。
グラインダーの目盛りで言えば、多くの機種ではエスプレッソ用の最も細かい設定から2〜3段階の範囲が目安になります。
挽き目を変えたら少量の豆でテスト抽出し、クレマの出方と味のバランスを確認してください。
抽出直前に挽くと炭酸ガスが逃げず鮮度を保ちやすい
挽きたての香りは格別ですが、これは同時に炭酸ガスが急速に放出され始めた証拠です。
挽いてから時間を置くほどガスが減っていくため、クレマをしっかり出すには抽出する直前に必要な量だけ挽くのが鉄板の方法です。
あらかじめ挽いてある粉を使う場合でも、開封後は密閉容器に入れて冷暗所で保管し、1週間を目安に使い切るとクレマの出方が保ちやすくなります。
タンピングは均一かつ垂直に約15〜20kgの力で押す
ポルタフィルターに粉を詰めたらタンパーで押し固めますが、力が弱いと湯がムラなく通らず、偏った場所ばかりから抽出が進んでしまいます。
約15〜20kgの力でまっすぐ垂直に押し込み、粉の表面を平らに仕上げるのが理想です。
体重計の上でタンパーを押す練習をすると、15kgの感覚が体で覚えられます。
傾いたタンピングは「チャネリング」と呼ばれる偏りの原因になり、クレマだけでなく味にも悪影響を及ぼすため注意してください。
抽出温度は90〜96℃が適正範囲
温度が低すぎるとコーヒーの成分が十分に溶け出さず、クレマも薄くなりがちです。
一方で高すぎると苦味や渋味が強調され、クレマも焦げたような暗い色になってしまいます。
ボイラー温度90〜96℃の範囲が、甘味・酸味・苦味のバランスが良くクレマもきれいに出る適正ゾーンです。
家庭用マシンでは温度設定ができない機種も多いため、抽出前にマシンを十分に温めてから(15〜20分程度)使い始めるのがポイントになります。
抽出時間は20〜30秒で仕上げる
エスプレッソの1ショット(約25〜30ml)は、20〜30秒で抽出するのが標準とされています。
20秒より短いと抽出不足でクレマが薄く水っぽい味になり、30秒を超えると過抽出で苦味が出すぎてしまいます。
抽出時間はグラインダーの挽き目やタンピングの強さで調整するのが基本的なアプローチです。
クレマが薄いと感じたら挽き目を少し細かくしてみてください。
硬度150〜300ppm程度の水を使うと安定しやすい
水質もクレマの安定性に影響する見落とされがちなポイントです。
硬度が150〜300ppm程度のやや硬めの水を使うと、ミネラル分がコーヒーの成分と結びつきクレマが安定しやすくなります。
日本の水道水は軟水(硬度50〜100ppm程度)が多いため、エスプレッソ用に市販のミネラルウォーターを試してみるのもひとつの方法です。
ただし硬度が高すぎるとスケール(水垢)がマシン内部に溜まりやすくなるため、300ppmを大きく超える水は避けてください。
軟水から中硬水に替えてみたところ、クレマの持ちがいつもより長くなった実感がありました。
水の違いでここまで変わるとは正直驚きです。
クレマの色と厚さでわかるコーヒー抽出の良し悪し
抽出が終わったあと、クレマの見た目をチェックするだけでエスプレッソの状態がわかります。
色・模様・厚さの5つの観点から、それぞれ解説していきます。
- キャラメルからヘーゼルナッツ色が理想的
- 「タイガースキン」と呼ばれる虎柄模様は良いクレマの証
- 白っぽいクレマは抽出不足のサイン
- 色が濃すぎるクレマは過抽出の可能性がある
- 厚さは2〜4mmが目安でスプーンで混ぜても数秒保つのが理想
キャラメルからヘーゼルナッツ色が理想的
理想的なクレマの色は、キャラメルからヘーゼルナッツにかけての赤みを帯びた茶色です。
この色に仕上がっているなら、抽出温度・圧力・挽き目のバランスが良好な証拠と言えます。
使う豆の焙煎度や品種によっても色味は変わりますが、黄金色〜茶褐色のグラデーションにおさまっていれば問題ありません。
「タイガースキン」と呼ばれる虎柄模様は良いクレマの証
クレマの表面に赤茶色の濃淡がまだら模様のように浮かぶことがあります。
この模様は「タイガースキン」と呼ばれ、バリスタの世界では抽出が良好であることを示すサインとして知られているのです。
タイガースキンは豆のオイルが均一に乳化している証拠で、特に新鮮な深煎り豆を使ったときに現れやすくなります。
毎回出せるわけではありませんが、現れたときは「抽出がうまくいった」と判断して良いでしょう。
白っぽいクレマは抽出不足のサイン
クレマが白っぽく薄い色に仕上がった場合は、抽出不足のサインです。
お湯の温度が低い、挽き目が粗い、抽出時間が短いといった条件が重なると、成分が十分に溶け出しません。
その結果、コーヒーの色味が薄くなってしまいます。
味もさっぱりしすぎて物足りなく感じられることが多いため、挽き目を少し細かくするか温度を上げてみてください。
浅煎り豆の場合はもともとクレマが薄い傾向があるため、深煎り豆に替えて再度試すのもひとつの手です。
色が濃すぎるクレマは過抽出の可能性がある
逆にクレマが非常に濃い焦げ茶色や、表面に黒い斑点が見られる場合は過抽出のおそれがあります。
お湯の温度が高すぎる、挽き目が細かすぎる、抽出時間が長すぎるといった原因が考えられるのです。
過抽出のエスプレッソは苦味やえぐみが強く、クレマの持ちも良くない傾向があります。
心当たりがあればグラインダーの目盛りを1段階粗くするか、抽出を25秒以内に収めるよう調整してみてください。
厚さは2〜4mmが目安でスプーンで混ぜても数秒保つのが理想
ちょうど良いクレマの厚さは2〜4mm程度で、しっかりとした密度があるものです。
スプーンで軽く混ぜたあと、一度崩れても数秒で元に戻るようなら「良いクレマ」と判断できます。
砂糖をひとつまみクレマの上にのせて、ゆっくりと沈んでいくかどうかで確かめる方法もあるのです。
砂糖がクレマの上に一瞬とどまってからゆっくり沈むなら、密度が十分な証拠です。
イタリアでは砂糖をクレマの上にのせる方法が、「良いエスプレッソかどうか」を判別する昔ながらの習慣として知られています。
観光客でも気軽に試せるので、イタリア旅行の際にはぜひ試してみてください。
コーヒーのクレマが出ない・すぐ消える原因と対処法
「エスプレッソを淹れたのに、クレマがほとんど出ない」「出てもすぐに消えてしまう」。そんな経験をしたことはありませんか?
原因と対処法を、5つのパターンに分けて解説していきます。
- 豆が古いと炭酸ガスが抜けてクレマが薄くなる
- 挽き目が粗すぎるとお湯が素通りして泡が立たない
- タンピングが弱いとガスがすぐに逃げてしまう
- マシンの圧力不足は家庭用マシンで起きやすい
- グループヘッドの汚れがクレマを妨げることもある
豆が古いと炭酸ガスが抜けてクレマが薄くなる
クレマが出ない原因として最も多いのが、豆の鮮度不足です。
焙煎から3週間以上経った豆は内部の炭酸ガスが大幅に減少しており、どんなに抽出条件を整えてもしっかりしたクレマは望めません。
対処法はシンプルで、焙煎日が明記されている豆を購入し、2週間以内に使い切ることです。
豆の保管は密閉容器に入れて常温の冷暗所がベストで、冷凍保存する場合は使う分だけ小分けにして解凍するのがポイントになります。
挽き目が粗すぎるとお湯が素通りして泡が立たない
挽き目が粗すぎると粉の隙間をお湯が素通りしてしまい、ガスやオイルを十分に引き出せません。
結果として抽出時間は短くなり、味も水っぽくなるうえにクレマもほとんど立ちません。
対処法としては、エスプレッソ用のグラインダーで最も細かい側から2〜3段階の範囲を目安に調整してみてください。
一度に大きく変えずに、1段階ずつ細かくしながらテスト抽出するのが失敗しないコツです。
タンピングが弱いとガスがすぐに逃げてしまう
タンピングの圧力不足は、粉の密度にムラを生みお湯の偏り(チャネリング)を引き起こします。
チャネリングが発生すると抽出が不均一になり、クレマも薄く不安定に仕上がります。
体重計の上で練習して15kgの力を体感するか、キャリブレーション機能付きのタンパーを使うと安定した圧力を再現しやすくなります。
ポルタフィルターの底から出てくる液体が「太い1本の筋」ではなく「細い複数の筋」に分かれている場合は、チャネリングが発生しています。
タンピング後に粉の表面が傾いていないか確認してください。
マシンの圧力不足は家庭用マシンで起きやすい
家庭用マシンの中には、抽出時の実効圧力が9気圧に満たない安価なモデルも少なくないのが実情です。
圧力が足りないと豆のガスやオイルを十分に押し出せず、クレマがごく薄くしか出ません。
購入前にスペックの「抽出圧」を確認し、ポンプ圧15気圧以上(実効9気圧以上)のモデルを選ぶのが目安になります。
すでにマシンを持っている場合は、挽き目をより細かく調整してお湯の通過を遅くすることで圧力を補う方法もあります。
グループヘッドの汚れがクレマを妨げることもある
グループヘッド(抽出口周り)にコーヒーオイルの古い汚れが蓄積すると、お湯の流れが不均一になりクレマに影響を与えるケースがあります。
特にシャワースクリーン(お湯を分散させる金属メッシュ)に目詰まりがあると、粉に均等に湯が当たらなくなります。
週に一度はブラシでシャワースクリーンを清掃し、月に一度はバックフラッシュ洗浄を行ってください。
マシンを清潔に保つことは、クレマだけでなく味の安定にもつながります。
エスプレッソマシンなしでクレマを楽しむコーヒーの淹れ方3選
エスプレッソマシンは数万円以上する高価な器具のため、すぐには手が出せないという方も多いはずです。
マシンがなくてもクレマに近い泡の作り方は3つあるため、順番に見ていきます。
- 増圧弁付きマキネッタ(ブリッカ等)なら泡の層が作れる
- ハンドプレッソやレバー式なら圧力をかけて抽出できる
- インスタントコーヒーで泡立てる「なんちゃってクレマ」もある
増圧弁付きマキネッタ(ブリッカ等)なら泡の層が作れる
通常のマキネッタ(モカポット)は圧力が1.5〜2気圧程度しかなく、エスプレッソのようなクレマはほぼ出ません。
しかしビアレッティ ブリッカやコフィカ クレマリッチのように、増圧弁が搭載されたモデルなら話は変わります。
増圧弁がポットの内圧を高めることで、通常のマキネッタよりも強い力でコーヒーを押し出し、表面に薄いクレマ状の泡が生まれます。
ただしマシンほどの厚いクレマは期待できませんが、「マキネッタのクレマ」として楽しむ気持ちで試してみてください。
ハンドプレッソやレバー式なら圧力をかけて抽出できる
ハンドプレッソは手動でポンプを押して圧力をかける携帯型のエスプレッソ抽出器具です。
最大圧力は16気圧に達するモデルもあり、正しく使えばエスプレッソマシンに近いクレマを再現できるのです。
レバー式のフレアエスプレッソメーカーやROKなども同様に、手の力で直接圧力をかけて抽出するタイプです。
電源が不要なためアウトドアでも本格エスプレッソが楽しめます。
ハンドプレッソのおおまかな使い方
- お湯を本体の水タンクに注ぐ
- ポンプを手動で約20回押して圧力を16気圧まで上げる
- コーヒーポッド(またはカフェポッド)をセットして抽出ボタンを押す
- カップにエスプレッソが注がれ、クレマの層が浮かぶ
インスタントコーヒーで泡立てる「なんちゃってクレマ」もある
「エスプレッソ器具は持っていないけどクレマっぽい泡を楽しんでみたい」という方には、インスタントコーヒーを使った方法がおすすめです。
インスタントコーヒーの粉と砂糖を同量ずつ(各大さじ1程度)取り、少量のお湯(大さじ1〜2)を加えてスプーンやミルクフォーマーで激しくかき混ぜます。
すると空気が取り込まれてペースト状のクリーミーな泡ができ、これをカップのコーヒーに乗せると見た目がクレマに似た仕上がりに。
近年は韓国発の「ダルゴナコーヒー」として知られるアレンジです。
本物のクレマとは仕組みが異なりますが、気軽に泡の楽しさを体験できるのは間違いないでしょう。
編集部がクレマの出方を3種類のコーヒー豆で比べてみた
「豆によってクレマの出方はどれくらい違うのか?」が気になったため、編集部で実際に3種類の豆をエスプレッソマシンで抽出して比較してみました。
使用したマシンはデロンギ デディカEC685Mで、抽出条件は3種とも同一にそろえて検証しました。
結果をそれぞれ解説します。
- イタリアンロースト(ロブスタブレンド)は安定して濃い泡が出た
- シングルオリジン中深煎り(アラビカ100%)は薄めだが香り豊か
- 焙煎3週間以上の豆ではクレマがほとんど出なかった
イタリアンロースト(ロブスタブレンド)は安定して濃い泡が出た
1種類目はイタリアのブランド豆(ロブスタ30%ブレンド・焙煎後10日)を使いました。
抽出するとカップの表面にしっかりとしたキャラメル色のクレマが広がり、厚さは実測で約3mmありました。
スプーンで軽くかき混ぜても5秒ほどで元に戻り、持続性も十分です。
やはりロブスタ種がブレンドされた深煎り豆はクレマとの相性が良いことを改めて確認できました。
シングルオリジン中深煎り(アラビカ100%)は薄めだが香り豊か
2種類目はエチオピア産のシングルオリジン(アラビカ100%・中深煎り・焙煎後8日)です。
クレマの色は明るめのヘーゼルナッツ色で、厚さは約2mmと1種類目より薄めでした。
ただし香りはこちらのほうが華やかで、フルーティーな甘い香りがカップから立ちのぼります。
「クレマの厚さ」か「香りの豊かさ」か。
どちらを優先するかは好みの領域です。
焙煎3週間以上の豆ではクレマがほとんど出なかった
3種類目はあえて焙煎から25日ほど経過した古い豆(中深煎り・アラビカ100%)を使いました。
結果は予想通りで、クレマは表面にごく薄くしか出ず、数秒で消えてしまいました。
味も平坦で香りの広がりに欠ける印象です。
鮮度とクレマの密接な関係を実感しました。
| 比較項目 | イタリアンロースト(ロブスタブレンド) | シングルオリジン中深煎り(アラビカ100%) | 焙煎3週間以上の古い豆 |
|---|---|---|---|
| クレマの色 | キャラメル色 | ヘーゼルナッツ色(明るめ) | ごく薄い白っぽい色 |
| クレマの厚さ | 約3mm | 約2mm | 1mm以下(すぐ消える) |
| 持続性 | 5秒以上保つ | 3秒程度 | ほぼ保たない |
| 香り | ナッツ系の深い香り | フルーティーで華やか | 弱い・平坦 |
焙煎25日の豆で淹れたエスプレッソを飲み比べた瞬間、「やっぱり鮮度は大切だな」と改めて感じたところです。
同じ条件でここまで差が出るとは驚きでした。
クレマが多ければ良いコーヒーとは限らない?味との関係
「クレマがたっぷり出ていれば美味しいエスプレッソ」と思い込んでいないでしょうか?
ただしクレマの量と味の品質は必ずしもイコールではありません。
その理由を3つの切り口で見ていきます。
- クレマの量だけでエスプレッソの味は判断できない
- 浅煎りスペシャルティはクレマが薄くても風味に優れる
- ロブスタ種はクレマが出やすいが苦味が強くなりやすい
クレマの量だけでエスプレッソの味は判断できない
クレマは抽出の状態を示す「目安」ではありますが、味の良さそのものを保証するわけではありません。
たとえば焙煎から日の浅い豆は大量のクレマを出しますが、ガスが多すぎて味が落ち着いていないケースもあります。
クレマの色・厚さ・持続性を「目安」として活用しつつ、最終的には自分の舌で味を確かめるのが正しい楽しみ方です。
浅煎りスペシャルティはクレマが薄くても風味に優れる
近年のスペシャルティコーヒーのトレンドでは、浅煎りの豆をエスプレッソで抽出するスタイルが広がっています。
浅煎り豆は深煎りに比べて油分が少なくガスの量も控えめなため、クレマは薄めにしか出ません。
それでもフルーティーな酸味や花のような香りなど、深煎りでは味わえない複雑な風味を楽しめるのが浅煎りエスプレッソの醍醐味です。
クレマの見た目にとらわれすぎると、こうした繊細な味の世界を見逃してしまいます。
ロブスタ種はクレマが出やすいが苦味が強くなりやすい
ロブスタ種はアラビカ種の約2倍のカフェインを含み、油分も豊富なためクレマが安定して立ちやすい品種です。
しかし裏を返せば苦味や雑味も目立ちやすく、ブレンド比率を上げすぎると味の繊細さは損なわれます。
イタリアのエスプレッソブレンドではロブスタ比率10〜30%が一般的で、「クレマの安定」と「味のバランス」を両立させた絶妙な配合と言えます。
クレマだけを追い求めてロブスタ比率を上げすぎると、肝心の味が犠牲になる点は覚えておいてください。
クレマを活かしたコーヒーアレンジと通な味わい方
クレマの存在感を活かすなら、エスプレッソをそのまま飲む以外にもさまざまなアレンジがあります。
ミルクと合わせたドリンクからイタリア流の通な飲み方まで、4つのスタイルを見ていきましょう。
- カフェラテやカプチーノで泡のまろやかさが加わる
- カフェマキアートはクレマとミルクフォームの二層が美しい
- アフォガートにエスプレッソを使えばクレマがアイスを包む
- 砂糖をクレマにのせて沈み具合から濃度を確かめる通な飲み方
カフェラテやカプチーノで泡のまろやかさが加わる
エスプレッソにスチームミルクを注ぐカフェラテやカプチーノは、クレマとミルクの泡が混ざり合うことでまろやかな口当たりが生まれます。
しっかりとしたクレマのエスプレッソをベースにすると、ミルクとの境界線がきれいに出てラテアートも描きやすくなるのです。
カフェラテとマキアートの違いについては、「マキアートとラテの違いは何?味・作り方・ミルク量をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
カプチーノの場合は泡の比率が高いため、クレマの風味をよりダイレクトに感じられる楽しみ方です。
カフェマキアートはクレマとミルクフォームの二層が美しい
カフェマキアートはエスプレッソの上にフォームドミルクを少量だけのせるシンプルなドリンクになります。
クレマの層の上にふわっとミルクフォームが浮かぶ二層構造が美しく、カフェでの見栄えもSNS映えも抜群です。
エスプレッソ本来の味をそのまま楽しみつつ、ほんの少し甘みが加わる絶妙なバランスです。
クレマがしっかり出ているからこそ実現する味わいと言えます。
アフォガートにエスプレッソを使えばクレマがアイスを包む
バニラアイスにアツアツのエスプレッソをかけるアフォガートは、イタリア生まれの定番デザートです。
クレマのあるエスプレッソをかけると、アイスにオイリーな泡の膜ができて香りが閉じ込められます。
スプーンで崩しながら食べると、冷たいアイスと温かいエスプレッソ、そしてクレマの香りが口の中で三位一体になります。
おうちカフェのデザートとして試してみてください。
砂糖をクレマにのせて沈み具合から濃度を確かめる通な飲み方
イタリアのバールでは、エスプレッソに砂糖をひとさじのせて飲む習慣があります。
このとき砂糖がクレマの上に一瞬とどまってからゆっくり沈んでいく様子は、エスプレッソの濃度とクレマの密度が十分であることを示すサインです。
砂糖がすぐに沈むならクレマの密度が足りず、抽出に改善の余地があると判断できます。
味の面でも、砂糖を入れることで苦味がやわらぎクレマの甘い香りがより引き立つため、エスプレッソビギナーの方にもおすすめの飲み方です。
コーヒーのクレマに関するよくある質問
クレマについてよく聞かれる疑問を7つピックアップしました。
それぞれ簡潔にお答えしていきます。
クレマは飲む前に混ぜた方がよいですか?
好みにもよりますが、混ぜずに一口目を飲むとクレマの滑らかさと香りを堪能できます。
クレマがないエスプレッソは美味しくないのですか?
必ずしもそうとは限りません。浅煎りのスペシャルティコーヒーはクレマが薄めでも味わいに優れていることがあります。
ドリップコーヒーの泡もクレマですか?
ドリップの泡は抽出時に発生する炭酸ガスの泡で、エスプレッソのクレマとは仕組みが異なります。
クレマには味があるのですか?
クレマ単体は苦味と渋味が強く感じられます。液体と一緒に飲むことで甘みやコクが引き立ちます。
家庭用エスプレッソマシンでもカフェと同じクレマは出せますか?
家庭用マシンの多くはポンプ最大圧が15気圧ですが、実際の抽出時は9気圧前後に調整される設計です。豆と挽き目を合わせればカフェに近いクレマが作れます。
焙煎直後の豆を使えば最高のクレマが出ますか?
焙煎直後はガスが多すぎて抽出が安定しません。ガスが適度に抜ける焙煎後3日から2週間ほどの豆がクレマに最適です。
クレマが出やすいおすすめのコーヒー豆はありますか?
深煎りでロブスタ種がブレンドされた豆が、クレマ向きです。キンボやラバッツァ、イリーなどイタリアブランドはエスプレッソ向きに調整されています。
【まとめ】クレマはコーヒーの鮮度と抽出技術が生み出すおいしさの証
クレマは見た目の美しさだけでなく、豆の鮮度・焙煎度・抽出条件のすべてが適切にそろったときに初めて現れる「おいしさの証」です。
- クレマはイタリア語で「クリーム」を意味し、約9気圧の高圧で炭酸ガスとオイルが乳化して生まれる泡
- 焙煎3日〜2週間の新鮮な豆・極細挽き・90〜96℃・20〜30秒が美味しいクレマの条件
- キャラメル〜ヘーゼルナッツ色で厚さ2〜4mmの「タイガースキン」が理想的な仕上がり
- 豆の鮮度・挽き目・タンピングの3要素を見直すだけでクレマは改善できる
- 増圧弁付きマキネッタやハンドプレッソならマシンなしでもクレマを体験できる
- クレマの量だけで味を判断せず、浅煎りスペシャルティなど多様な豆も試す価値がある
まずは焙煎日が明記された新鮮な豆を手に入れるところから始めてみてください。
クレマがきれいに浮かんだ朝のエスプレッソは、おうちカフェの満足度をぐっと引き上げてくれるはずです。
エスプレッソの苦味が気になる方は、「エスプレッソが苦いのはなぜ?原因と苦味を活かすおいしい飲み方」もあわせてご覧ください。
