「コーヒーは好きだけど、あの酸っぱさがどうも苦手で…」そう感じたことはありませんか?せっかくリラックスしようと淹れたコーヒーが、予想外に酸っぱくてがっかりした経験、もしかしたらあなたにもあるかもしれません。
でも、大丈夫。コーヒーの酸味は、豆の選び方や淹れ方次第で、ガラッと印象が変わるものなのです。酸味が少なく、まろやかで飲みやすいコーヒーはちゃんと存在しますし、お家でも十分楽しめますよ。
この記事を読めば、なぜコーヒーが酸っぱく感じることがあるのか、その理由が分かります。そして、どんな豆を選べば酸味が穏やかなのか、具体的な豆の種類も紹介します。
さらに、お家でコーヒーを淹れるときに、ちょっとしたコツで酸味を抑える方法も解説。これを読めば、もうコーヒー選びで失敗したり、淹れたコーヒーの酸味にがっかりしたりすることも少なくなるはずです。
コーヒーの酸味ってなんだろう?
まず、「コーヒーの酸味」について、少し知っておきましょう。
実はコーヒーの「酸味」は、必ずしも悪いものではありません。コーヒーが持つ基本的な味のひとつなのです。
コーヒー豆は、もともと「コーヒーチェリー」という果実の種。さくらんぼのような赤い実で、熟したものを食べると甘酸っぱいフルーツの味がします。
果物の種だから、コーヒー豆にも自然な酸味が含まれている、というわけですね。この酸味は、コーヒーの味に複雑さや爽やかさをプラスし、舌の両側でキュッと感じる刺激として現れます。
コーヒーが酸っぱく感じる主な原因は4つ
では、どうしてコーヒーが嫌な感じに「酸っぱい」と感じることがあるのでしょうか?
主な原因は、だいたい4つ考えられます。
焙煎が浅い
コーヒー豆は焙煎(ロースト)することで味が作られます。
焙煎時間が短い「浅煎り」だと、豆が元々持っている酸味成分(クエン酸やリンゴ酸など)が多く残ります。これがフルーティーさにもなるのですが、浅すぎると酸味が目立ちすぎて「酸っぱい!」と感じやすくなるのです。
豆の種類や育った場所
コーヒー豆の種類や、どんな場所で育ったかによっても、含まれる酸味の量や質は変わってきます。
特定の品種や、標高が高い涼しい場所でゆっくり育った豆は、複雑な味と一緒に酸味も多くなる傾向があるようです。ケニアやエチオピアといった国の豆は、酸味が強いことで知られていますね。
豆が古くなっている
これが、多くの人が「嫌だな」と感じる酸っぱさの大きな原因かもしれません。
焙煎したコーヒー豆は、実は生鮮食品のようなもの。時間が経つと、空気や湿気、熱、光などの影響で劣化してしまいます。
淹れ方の問題
コーヒーを淹れる時のやり方、特に「抽出不足」も嫌な酸味の原因になります。
コーヒーの味の成分は、お湯に溶け出す順番があります。酸味は比較的早く溶け出し、甘みや苦み、コクは後からゆっくり出てくるイメージ。
だから、お湯の温度が低すぎたり、豆の挽き方が粗すぎたり、お湯をかける時間が短すぎたりすると、酸味ばかりが出てしまって、甘みや苦みとのバランスが取れず、味の薄い、トゲトゲした酸っぱいコーヒーになってしまうことがあるのです。
フルーティーな「良い酸味」はコーヒー本来の魅力
一方で、コーヒーが元々持っている「良い酸味」は、そのコーヒーをより美味しくしてくれる大切な要素です。
特に品質にこだわったスペシャルティコーヒーの世界では、この酸味が高く評価されています。
「良い酸味」は、よく「フルーティー」と言われます。オレンジやレモンのような爽やかさ、ベリーみたいな甘酸っぱさ、リンゴやブドウのようなみずみずしさなど、色々な果物に例えられるでしょう。
質の良い酸味は、コーヒーに明るさや爽やかさ、味の複雑さを与え、甘みや苦みとのバランスを取る役割も果たします。
ちゃんと焙煎されて、新鮮で、上手に淹れられたコーヒーの酸味は決して嫌なものではなく、むしろコーヒーの味を豊かにしてくれる存在なのです。
古い豆や淹れ方ミスによる「悪い酸味」に注意
「良い酸味」がある一方で、やはり気をつけたいのが「悪い酸味」。これはコーヒー本来の味とは違い、多くの人が「苦手だなぁ」と感じる原因になるものです。
「悪い酸味」は、ツンと鼻につくような刺激的な味、舌にピリピリ残るような嫌な感じ、時にはお酢のような酸っぱさとして感じられることも。
この「悪い酸味」が出てしまう主な原因は、先ほども触れたように二つあります。
一つは、豆が古くなること。焙煎されたコーヒー豆は、時間が経つと鮮度が落ちます。空気や湿気、熱、光に触れることで化学変化が進み、嫌な酸味や渋み、古くさい香りが出てきてしまうのです。特に、淹れたコーヒーを長い時間そのままにしておくと、酸味が増すこともあります。
もう一つは、淹れ方の失敗(抽出不足)。コーヒー豆から美味しい成分(特に甘みや良い香り)を十分に取り出せないと、最初に溶け出す酸味だけが目立ってしまうのです。その結果、味が薄くて甘みがなく、酸っぱさだけが際立つ、バランスの悪いコーヒーになってしまいます。
もしあなたが「コーヒーの酸味が苦手」と感じているなら、それはもしかしたら、こんな風に古くなった豆や、上手に淹れられなかったコーヒーが原因かもしれません。
コーヒー豆の酸味に関わる4つのポイント
コーヒーの酸味を上手に避けるためには、豆を選ぶ段階で知っておきたい大切なポイントがいくつかあります。
ここでは、コーヒー豆の酸味に影響する主な4つの要素を見ていきましょう。
1.焙煎度:深煎りほど酸味が減る
コーヒー豆の酸味に一番大きく影響するのが焙煎度、つまり豆をどれくらい煎るか、ということです。
生豆を熱で煎ることで、豆の色や香り、味が大きく変わります。
焙煎が進むほど、豆の中の酸味成分(特にクロロゲン酸など)は熱で分解されて減っていきます。逆に、焙煎の後半になると、苦み成分やコク、香ばしい香りが生まれてくるのです。
焙煎度は細かく分けると8段階ありますが、大きく分けるとこんな感じです。
- 浅煎り:豆の色は明るい茶色。酸味が一番強く、フルーティーな香りが特徴。苦みは少なく、味は軽め。
- 中煎り:日本でよく飲まれるレギュラーコーヒーに多い。酸味と苦みのバランスが良く、豆の個性が分かりやすい。程よいコクもあります。
- 深煎り:豆の色は濃い茶色~黒っぽく、油が浮き出ることも。酸味はほとんど感じなくなり、代わりに強い苦み、香ばしさ、しっかりしたコクが主役になります。
酸味の少ないコーヒーが飲みたい場合は、中深煎り(シティロースト、フルシティローストあたり)から深煎り(フレンチロースト、イタリアンローストあたり)の豆を選ぶのが基本となります。
2.生産国:ブラジルやインドネシアは酸味が穏やか
コーヒー豆が育った生産国(産地)も、豆が持つ味の特徴、特に酸味の強さに関係しています。土や気候、標高、育てられている品種などが、豆の味に影響を与えるのですね。
酸味が穏やかなコーヒー豆の代表的な生産国といえば、こちら。
- ブラジル
- インドネシア
他にも、グアテマラ産の豆も、焙煎によっては酸味が穏やかでバランスが良いと言われることがあります。
コロンビア産の豆もバランス型で、中深煎り以上にすれば酸味は比較的落ち着くでしょう。
逆に、エチオピア、ケニア、ルワンダなどのアフリカや中米の一部の国の豆は、フルーティーで明るい酸味が特徴とされることが多いです。酸味が苦手な方は、これらの産地の豆を選ぶときは、特に焙煎度をよく確認した方が良いかもしれません。
3.精製方法:豆の処理方法も味に関係
コーヒー豆の精製方法、つまり収穫したコーヒーチェリーから種(生豆)を取り出す工程も、酸味の質や甘み、コクに影響します。
主な精製方法と、味への影響はこんな感じです。
- ウォッシュド:すっきり、はっきりした酸味が特徴。
- ナチュラル:酸味は比較的穏やか、独特のフルーティーな甘みや香り、しっかりしたコクが出やすいと言われます。
- パルプドナチュラル/ハニープロセス:心地よい甘みやまろやかさ、バランスの取れた酸味が得られるとされます。
- スマトラ式:低い酸味、重厚なコク、土やハーブのような独特の風味。
より穏やかで丸みのある酸味や甘みが欲しい場合は、ナチュラル、ハニープロセス、スマトラ式で精製された豆を選ぶと良いかもしれません。
4.鮮度:古い豆は「悪い酸味」のもと
最後に、とても大切なのがコーヒー豆の鮮度です。どんなに良い豆を選んでも、古くなってしまっては台無し。
焙煎されたコーヒー豆は、時間が経つと劣化して、「悪い酸味」が出やすくなります。豆が空気に触れて酸化したり、湿気を吸ったりすることで、嫌な酸味成分ができてしまうのです。
古くなったコーヒーは、酸っぱいだけでなく、香りも弱くなり、味がぼやけたり、渋みを感じたりすることもあります。
コーヒー豆は焙煎してから数日~2週間くらいが一番美味しい時期と言われることが多いです。特に、粉で買うと、空気に触れる面積がとても大きくなるので、豆の状態よりもずっと早く味が落ちてしまいます。
できれば、コーヒーは豆のまま買って、淹れる直前に挽くのが、鮮度を保って嫌な酸味を避ける一番良い方法です。
具体的にどれ?酸味の少ないおすすめコーヒー豆はこれ!
さて、ここからは具体的に、酸味が少なくて飲みやすいと評判のコーヒー豆をいくつかご紹介します。
もちろん好みは人それぞれですが、酸味が苦手な方が最初に試してみるのにぴったりな銘柄たちです。
豆/産地 | よくある焙煎度 | 酸味レベル | コク | 主な味の印象 | よくある精製方法 | なぜ酸味が少ない? |
---|---|---|---|---|---|---|
ブラジルサントス | 中煎り〜中深煎り | ★☆☆☆☆ | 中 | ナッツ、チョコ、マイルド、バランス良し | ナチュラル、パルプドナチュラル | 元々穏やか、バランス重視の焙煎が多い |
インドネシアマンデリン | 中深煎り〜深煎り | ☆☆☆☆☆ | 強 | 土、ハーブ、スパイス、重厚なコク | スマトラ式 | 産地と精製方法、深めの焙煎が多い |
コロンビアスプレモ(中深煎り以上) | 中深煎り〜深煎り | ★★☆☆☆ | やや強 | カラメル、ナッツ、バランス良し、まろやか | ウォッシュド | 深煎りで酸味が落ち着き、甘みとコクが増す |
インドモンスーンマラバール | 中深煎り〜深煎り | ☆☆☆☆☆ | やや強 | 土、木、スパイス、独特の風味 | モンスーン処理 | 特殊な処理で酸味が極めて少なくなる |
深煎りのスペシャルティ豆(例:ルワンダ) | 深煎り | ★☆☆☆☆〜★★☆☆☆ | やや強 | ロースト香、ビターチョコ、スモーキー | 様々(例:ウォッシュド) | 深煎りで酸味が分解され、焙煎の味が主役 |
酸味控えめブレンド | 中煎り〜深煎り | ★☆☆☆☆〜★★☆☆☆ | 中〜やや強 | マイルド、スムース、バランス良し | 様々 | 低酸味の豆をベースに飲みやすく調整 |
酸味レベルは星が少ないほど穏やか、コクは目安です。
定番で飲みやすい「ブラジルサントス」
「まずは失敗の少ないものから」という方には、ブラジル産の「サントス」がおすすめです。
酸味はとても穏やかで、ナッツやチョコレートのような香ばしくて甘い香りが特徴。苦みも強すぎず、全体のバランスが取れているので、とても飲みやすいコーヒーとして知られています。
多くのお店で扱っていて、ブレンドのベースにもよく使われる、まさに定番中の定番と言えるでしょう。中煎りから中深煎りで売られていることが多いです。
深いコクと独特の風味「インドネシアマンデリン」
しっかりした飲みごたえと、ちょっと個性的な味を求めるなら、インドネシア・スマトラ島産の「マンデリン」が良いかもしれません。
マンデリンの一番の特徴は、すごく少ない酸味と、シロップみたいにどっしりとしたコク。味は、土っぽさや、ハーブ、スパイス、ビターチョコのような複雑な風味が感じられます。
これはスマトラ島ならではの気候と、「スマトラ式」という特別な精製方法、そして多くの場合、深めに焙煎されることによるもの。酸味が苦手で、濃いコーヒーが好きな方には、ぜひ一度試してほしい銘柄です。
バランスの良さが魅力「コロンビアスプレモ」
コロンビア産のコーヒーは、全体的にバランスが良いことで知られています。「スプレモ」というのは、大粒で品質の良い豆のグレードのこと。
コロンビアスプレモは、本来はマイルドな酸味がありますが、中深煎り以上に焙煎すると、酸味の角が取れて丸くなり、カラメルのような甘さやナッツ系の香ばしさ、しっかりしたコクが出てきます。
ブラジルほど酸味が控えめではありませんが、深煎りにしても重すぎず、甘み、苦み、コクのバランスが良い味わいは、多くの人に好まれるでしょう。色々な焙煎度で楽しめるのも魅力です。
個性的な味わい「インドモンスーンマラバール」
少し変わった低酸味コーヒーを試したいなら、インド産の「モンスーンマラバール」はいかがでしょうか。
これは、収穫した生豆を、モンスーン(季節風)が吹く時期の湿った風に数ヶ月さらす、という世界でも珍しい特別な処理(モンスーン処理)をして作られます。
この間に、豆は湿気を吸ったり吐いたりして膨らみ、色が金色っぽく変わるとともに、酸味が劇的に少なくなり、とてもまろやかな口当たりになります。
味は、土や木のような香りに加え、スパイスや麦わらのような独特な感じがあり、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、酸味の少なさはトップクラス。どっしりしたコクも特徴です。
深煎りで楽しむ「ルワンダスカイヒル」など他のストレート豆
もともとは酸味が特徴とされる産地の豆でも、焙煎をすごく深く(フレンチローストやイタリアンローストなど)することで、酸味をぐっと抑えて楽しむという方法もあります。
例えば、ルワンダ産のコーヒーは、普通は柑橘系や紅茶のような爽やかな酸味が魅力ですが、これを深煎りにすると、酸味はあまり感じなくなり、代わりにビターチョコのような甘苦さや、スモーキーな香り、しっかりしたコクが前に出てきます。
この場合、豆が本来持っている繊細な個性は感じにくくなりますが、「深煎りのしっかりした苦みとコクが好きで、とにかく酸味は避けたい」という方には良い方法です。
ルワンダの「スカイヒル」だけでなく、グアテマラやコスタリカなど、色々な産地の豆が深煎りで売られていることがあります。お店で「深煎り」と書かれているものを選んでみるのも良いでしょう。
飲みやすさを追求した「ブレンドコーヒー」も選択肢に
特定の産地にこだわらず、「とにかく飲みやすくて酸味の少ないものを」と考えるなら、ブレンドコーヒーも有力です。
多くのお店では、いくつかの産地の豆を組み合わせることで、狙った味(例えば「マイルドさ」「コク深さ」「酸味控えめ」など)のブレンドを作っています。
特に、酸味を抑えたブレンドには、ベースとしてブラジル産の豆がよく使われています。パッケージやメニューに「マイルド」「スムース」「ダークロースト」「酸味ひかえめ」といった言葉があるブレンドは、試してみる価値があるでしょう。
ブレンドは、安定した味を提供することが目的なので、比較的ハズレが少ないとも言えます。
自宅で実践!コーヒーの酸味を抑える淹れ方のコツ
酸味の少ない豆を選んだら、次は淹れ方です。
実は、同じ豆を使っても、淹れ方をちょっと工夫するだけで、感じる酸味の強さを調整できるのです。
ここでは、お家でできる、コーヒーの酸味を抑える淹れ方のコツをご紹介します。
挽き目・湯温・時間で酸味は調整できる
ハンドドリップなどでコーヒーを淹れる時、特に大切なのが「挽き目(粉の粗さ)」「お湯の温度」「抽出時間」の3つ。
これらを調整することで、酸味の出方をコントロールできます。
私も家で淹れるとき、ちょっと酸味が強いなと感じたら、まずは挽き目を一段階細かくしてみます。使っているミルで、いつもよりメモリを一つ細かくするだけ。
それでもまだ酸味が気になるようなら、次はお湯の温度。普段90℃くらいで淹れているのを、92℃とか93℃に上げてみます。これだけで、驚くほど味がまろやかになることがあるんですよ。
挽き目
豆をどれくらい細かく挽くかは、お湯と粉が触れる面積や、お湯が粉を通り抜けるスピードに関わり、味の出方に影響します。
一般的に、酸味は早く溶け出す成分。もし、淹れたコーヒーが酸っぱい原因が「抽出不足」(味が薄くて水っぽく、酸味だけがトゲトゲしい感じ)なら、挽き目を少し細かくすると、お湯と粉がよく触れ合い、酸味に続く甘みや苦みといった成分もしっかり出て、バランスの良い味に近づけることができます。
ただし、細かくしすぎると今度は雑味や嫌な苦みが出ることもあるので、少しずつ調整するのがポイントです。
湯温
お湯の温度も味に大きく影響します。
一般的に、温度が高いほどコーヒーの成分はたくさん、速く溶け出す傾向があります。苦み成分は特に高温で出やすいようです。
逆に、温度が低いと酸味が出やすくなります。なので、酸味を抑えたい場合は、少し高めの温度のお湯(だいたい90℃〜96℃くらい)を使うのが効果的でしょう。
沸騰したお湯を少しだけ(30秒~1分くらい)待つくらいの温度が良いかもしれません。
抽出時間
お湯がコーヒー粉に触れている時間も大切です。
先ほども触れたように、酸味は早く、苦みやコクは後から出てきます。お湯をかける時間が短すぎると、酸味ばかりが目立つコーヒーになりがち。酸味を抑えて全体のバランスを取るには、ちょうど良い抽出時間を確保することが大切です。
ハンドドリップなら、だいたい2分半〜3分半くらいが目安ですが、使う器具によっても変わります。お湯を注ぐスピードを少しゆっくりにしたり、最初の「蒸らし」の時間をしっかり取るなどして、コーヒーの甘みやコクを引き出すことを意識すると、酸味が和らいで感じられるでしょう。
水出しやフレンチプレスなら酸味が出にくい
淹れ方そのものを変えることでも、酸味の感じ方をコントロールできます。
特に酸味が出にくいと言われる代表的な方法が「水出しコーヒー」と「フレンチプレス」です。
水出しコーヒー
その名の通り、コーヒー粉を水(常温か冷たい水)で時間をかけてゆっくり淹れる方法です。
普通は粗挽きの粉を水に浸して、冷蔵庫などで8時間~24時間くらい置いて作ります。水で淹れると、お湯で淹れる場合に比べて、酸味成分や苦み成分(特に酸化した油分など)が溶け出しにくいという特徴があります。
そのため、出来上がりはとても口当たりがまろやかで、角の取れた優しい甘みがあり、酸味や苦味が抑えられたコーヒーになります。酸味にとても敏感な方には、特におすすめの方法です。
フレンチプレス
コーヒー粉をお湯に浸して淹れる「浸漬式(しんししき)」という方法の一つ。金属のフィルターで濾すので、紙フィルターと違ってコーヒーの油分や細かい粉がそのままカップに入ります。
これにより、コーヒー本来の味がダイレクトに感じられ、しっかりした飲みごたえ(ボディ)と油分によるなめらかな口当たりが得られます。
この豊かなコクが、酸味を相対的に和らげ、全体のバランスを良く感じさせてくれることがあるのです。もちろん、使う豆自体が酸味の少ないものであることが望ましいですが、ペーパードリップで淹れた時よりも酸味がマイルドに感じられるかもしれません。
ドリッパーの形や水の種類も味に影響あり
さらに細かい点ですが、使う器具や水も、最終的なコーヒーの味に影響することがあります。
ドリッパーの形
ハンドドリップで使うドリッパーには、色々な形があります。
形によってお湯の流れ方やコーヒー粉との接触時間が変わり、それが味の出方に影響して、結果的に酸味と苦みのバランスに微妙な差が出ることがあります。
特定のドリッパーが酸味を抑える、と一概には言えませんが、いつも同じドリッパーを使うことで、他の要素(挽き目、湯温、時間)を調整しやすくなります。
水の種類
コーヒーの約98%は水。だから、使う水の質も味に影響します。
水道水のカルキ臭はコーヒーの香りを邪魔することがありますし、ミネラルが多すぎる硬水は味がぼやけることも。逆にミネラルが少なすぎる軟水(蒸留水など)だと、味が尖りすぎることも。
一般的には、浄水器を通した水や、ミネラルバランスの良い軟水〜中硬水(市販のミネラルウォーターなど)を使うと、コーヒー豆の味を引き出しやすいと言われています。
手軽に楽しむ!酸味の少ないインスタント・ドリップバッグ・デカフェ
忙しい時や、器具がない場所でも、手軽にコーヒーを楽しみたいですよね。
インスタントコーヒーやドリップバッグ、カフェインを控えている方向けのデカフェ(カフェインレスコーヒー)にも、酸味の少ない選択肢はあります。
以下では「おすすめ3選」として、具体的なブランド名ではなく選ぶ際のポイントや種類をお伝えします。
インスタントのおすすめ3選
インスタントコーヒーは、手軽さが一番の魅力。
酸味の少ないものを選ぶには、以下の点を参考にしてみてください。
「ダークロースト」「深煎り」表示のもの
パッケージに焙煎度が書いてあれば、深煎り系の表示があるものを選びましょう。
苦みやコクが強めで、酸味が抑えられている可能性が高いです。
「マイルド」「スムース」なブレンド
特定の味を強く打ち出すより、「マイルド」「スムース」といった飲みやすさをアピールしているブレンドは、酸味が控えめに作られていることが多いでしょう。
ブラジル産豆をベースにしているものなども良いかもしれません。
フリーズドライ製法のもの
インスタントコーヒーの作り方には主にスプレードライとフリーズドライがありますが、一般的にフリーズドライの方が、熱によるダメージが少なく、コーヒー本来の風味や香りが残りやすいと言われます。
よりなめらかな味を求めるなら、フリーズドライ製法を選んでみるのも手です。
ドリップバッグのおすすめ3選
一杯ずつ手軽に淹れられるドリップバッグも人気。
こちらも、選ぶポイントはインスタントと似ています。
深煎りタイプのドリップバッグ
「フレンチロースト」「イタリアンロースト」あるいは単に「深煎り」と表示されているものを選びましょう。
しっかりした苦みとコクが期待でき、酸味は控えめなはずです。
低酸味産地のシングルオリジン
「マンデリン」「ブラジル」など、もともと酸味が穏やかな産地の豆だけを使ったドリップバッグも売られています。産地の個性を楽しみつつ、酸味を避けたい場合にぴったり。
「コク」「まろやか」を謳うブレンド
パッケージの味の説明をよく読み、「コク」「まろやかさ」「香ばしさ」などが強調されているブレンドを選びましょう。
酸味よりも、飲みごたえやバランスを重視して作られていることが多いです。
デカフェのおすすめ3選
カフェインを取り除いたデカフェコーヒーでも、酸味の少ないものを選べます。デカフェの味は、元の豆の品質、焙煎度、そしてカフェインの除去方法(スイスウォーター式、二酸化炭素式など)によって変わりますが、酸味に関しては元の豆と焙煎度が重要です。
深煎りデカフェ
一番分かりやすい選択肢です。デカフェでも、深煎りにすれば酸味はかなり抑えられます。
低酸味産地のデカフェ
ブラジル産やインドネシア(スマトラ)産の豆を使ったデカフェを探してみましょう。元の豆の性質から、酸味が穏やかな傾向があります。
スイスウォーター式などの高品質な深煎りデカフェ
スイスウォータープロセスは、化学薬品を使わずに水だけでカフェインを除く方法で、比較的風味が保たれやすいと言われます。この方法で作られたデカフェを深煎りにしたものは、きれいな味わいと少ない酸味を両立しているかもしれません。
カフェで失敗しない!酸味の少ないコーヒーの頼み方
カフェでコーヒーを頼む時、「酸っぱかったらどうしよう…」とちょっと不安になることもありますよね。
でも、ちょっとしたコツを知っておけば、失敗を防ぎ、好みに合った一杯に出会える確率がぐっと上がります。
メニューの焙煎度や風味説明を要チェック
まずは、メニューをじっくり見てみましょう。多くのお店では、コーヒー豆の種類や味の特徴について説明が書いてあります。以下のキーワードに注目してみてください。
- 焙煎度:「深煎り」「フレンチロースト」「イタリアンロースト」「中深煎り」といった言葉を探しましょう。
- 味の説明:「コク」「苦味」「香ばしい」「ナッツ」「チョコレート」「スモーキー」「まろやか」「スムース」といった言葉は、酸味が控えめなコーヒーによく使われる表現です。
- 産地:「ブラジル」「インドネシア(マンデリンなど)」と書かれていれば、酸味が穏やかな可能性が高いです。「グアテマラ」や「コロンビア」は、焙煎度や説明文と合わせて判断しましょう。
バリスタへ「酸味控えめ」などの希望を伝えよう
メニューを見てもよく分からない時や、もっと確実に選びたい場合は、遠慮なくバリスタ(コーヒーを淹れるプロ)に聞いてみましょう。
バリスタはコーヒーの専門家。お客さんの好みに合ったコーヒーを提案するのも仕事の一つです。
こんな風に、自分の好みを伝えてみてください。
- 「酸味が少ないコーヒーはどれですか?」
- 「酸っぱいのが苦手なんですが、おすすめはありますか?」
- 「深煎りで、苦みやコクがあるタイプが好きです。」
- 「一番酸味が穏やかな豆はどれでしょうか?」
また、「本日のコーヒー」や「ハウスブレンド」についても、「これは酸味は強いですか?」「焙煎は深めですか?」などと尋ねてみると良いでしょう。
酸味の少ないコーヒーに関するよくある質問
最後に、酸味の少ないコーヒーについて、よく聞かれる質問とその答えをまとめました。
酸味の少ないコーヒーのまとめ
今回は、「酸っぱいコーヒーが苦手」という方に向けて、酸味の少ないコーヒーの選び方と淹れ方について詳しく見てきました。最後に、大切なポイントをまとめておきましょう。
- コーヒーの酸味には、果物のような爽やかな「良い酸味」と、古さや淹れ方ミスによる嫌な「悪い酸味」があります。苦手なのは後者のことが多いでしょう。
- 酸味の少ないコーヒーを選ぶ基本は、「深煎り」の豆を選ぶこと。焙煎が深いほど酸味は少なくなります。
- 「ブラジル」や「インドネシア(マンデリンなど)」は、もともと酸味が穏やかな豆の代表的な産地です。
- 豆の処理方法では、「ナチュラル」「ハニープロセス」「スマトラ式」などが、比較的穏やかな酸味や甘みを生み出す傾向があります。
- 「鮮度」はとても重要。古い豆は「悪い酸味」のもと。豆のまま買い、密閉・遮光・冷暗所で保存し、早めに飲み切りましょう。
- 淹れ方でも酸味は調整できます。抽出不足による酸っぱさには、「挽き目を細かく」「湯温を高く」「抽出時間を適切に」といった工夫が有効です。
- 「水出しコーヒー」はとても酸味が少なく、「フレンチプレス」はコクで酸味を和らげて感じさせることがあります。
- インスタント、ドリップバッグ、デカフェにも低酸味の選択肢はあります。焙煎度や味の説明をよく確認しましょう。
- カフェでは、メニューをチェックし、バリスタに「酸味控えめ」と好みを伝えるのが確実です。
- 鮮度は味だけでなく、胃への負担感にも関係するかもしれません。
コーヒーの酸味は、決して悪いものではありません。でも、もしあなたが嫌な酸っぱさに悩んでいるなら、今回ご紹介したヒントを参考に、豆選びや淹れ方を少し変えてみてはいかがでしょうか。